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WTOは途上国になにをもたらすか 

saynowto.jpg6月15~16日に東京で「世界経済フォーラム東アジア会議」が開かれました。このお金持ちたちによる東アジア自由貿易圏の動きに対抗して、17日に「人々のアジアをつくる」フォーラムを開催しました(詳しくは、「脱WTO草の根キャンペーン」ブログ、「617取材団」のページ、を見てください)。

以下には、対抗フォーラムでスピーチをしてくださった、フィリピンのジョセフ・プルガナンさんの論文の翻訳を掲載します。WTOは先進国市場を開放することで、途上国の発展をうながすという主張があります(たとえば、ここを押す)。ジョセフさんの論文は、こうした主張とは真っ向から対立します。

すこし長いので要約すると、WTO体制のなかでフィリピンのような途上国が自国の政策(関税率など)を自国で決定できる裁量の幅は、ますます狭まっている、ということを論じています。詳しく知りたい方は、全文をご覧ください。

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香港でのあやまった取り決め―WTO会議での妥協と抵抗に関する今なお継続中のストーリー
ジョセフ・プルガナン(ストップ・ザ・ニューラウンド・コアリション)

2005年12月18日

 五日間の熱心な交渉の後に、香港の商工科学技術長官のジョン・ツァン氏は、ひどく演出された全体会議で小槌を叩き、香港での世界貿易機関(WTO)第六回閣僚会議が幕を閉じたと宣言した。閣僚宣言は、実質的には何も争われずに承認された。ただベネズエラのマリ・ピリ・ヘルナンデスが、起立してベネズエラに対する文書の適用の留保を主張したのが例外だった。その宣言は交渉の多くの重要な領域に関する合意を具体化し、2006年までにドーハ・ラウンドに結論を出すための明瞭な方向性と 道筋を描いている。
 しかしながら、状況はもう少し熱気に溢れていた。一日前に、数千の抗議者たちはコンベンション・センターに向けてデモ行進し、警官のバリケードをぶち破った。WTOに対するもっとも戦闘的な反対表現の一つでは、抗議者が警官と衝突するとともに、デモは暴力的なものに変わっていった。黙認がコンベンション・センター内部のゲームの名であったとすれば、外部でのそれは抵抗であった。そしてツァンが閣僚会議を終わらせるために小槌を叩いた時までに、人びとはWTOに対する評価を定めていた。その時にワンチャイ のがらんとした街頭には、「ダウン、ダウン、WTO」という叫びがこだまし続けていた。

香港での取り決め

 「香港の取り決め」は、2004年に交渉を軌道に戻した、欠陥だらけで非民主的な「7月の枠組み」を思い起させるものであった。閣僚宣言は、論争的な分野ではうまくあいまいにされているものの、注意深く練られた言葉で、交渉を前進させる空間を保証している。他方でその文書は、関税削減フォーミュラや交渉アプローチのような特定の分野では、既に合意に達したことを示している。

幻想の利益
 農業においては、関税と国内支持の削減を、一挙に、あるいは徐々に進めることに関する合意が香港で達成された。しかしながら、関連する敷居に関しては、合意に至らなくてはならないことがなお残されている。
 特別品目 (SP)と特別セーフガード措置 (SSM)の分野は、これらの規定がある製品に柔軟性や保護を提供するので、フィリピンのような開発途上国には重要な議題である。この分野で宣言のなかに登場したのは、SPとSSMの諸要素の指定と措置に関する注釈であった。もう一つの注釈は、開発途上国に柔軟性を承認して、SP下におけるタリフラインの数を自ら指定することであった。しかしながら、正確な 取り決めは、さらに定められなくてはならない。
 その宣言はモダリティを設定する明確な期限に関しても、2006年4月30日まで、包括的な草案のスケジュールも、2006年7月31日までと、すでに定めている。
 しかし、おそらく農業に関する中心となった取り決めとは、2013年の末日には輸出補助金の除去し、食糧援助のような輸出のための手段を規律することに関する協定であったと言えよう。
 農業の結果をていねいに解釈すると、途上国の期待していた利益が実際には幻想であることがわかるであろう。フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウスのアイリーン・クワが記したところでは、「輸出補助金はEUの輸出補助支持のほんの小さな割合を占めるに過ぎない。ほとんどの輸出補助支持は、WTOでは合法的な『グリーン・ボックス』に分類される。そこに分類された場合には、現在の交渉では規律を免れることができる」。 加えて、合衆国とEUから出された国内支持の削減の約束は、実際には現実の援助の最小限の削減にしかならないだろう。結局、合衆国とEUは、EUの場合には約900億ユーロ、合衆国の場合には約740億ドルといった、自国の高水準の補助金を依然として維持することができるであろう。

脱工業化のためのフォーミュラ
 非農業産品市場アクセス(NAMA)での主な一撃は、関税削減のための(係数を用いた)スイス・フォーミュラの採用であった。合衆国とEUによって積極的に推進されたスイス・フォーミュラは、 より高い関税の製品により大きな関税削減を求める野心的な方式である。スイス・フォーミュラの採用とともに、交渉は現在、当該の係数のレベルをめぐっての議論へと移っている。たとえばEUは、開発途上国に15%の係数を提案している。その係数は、15という係数を意味すると同時に、拘束税率の天井も示している。すなわち、工業製品と他の非農業産品について、関税が15%より高くなることはない。
 平均すると、先進国の工業製品の拘束関税率は、開発途上国の税率と比較するならば低い。先進国の工業製品の関税は、4-5%の間にある。その一方でラテンアメリカでそれは、25-50%の間にある。たとえば、インドの非農産品の拘束税率は、高くて100%(魚介類や水産加工品)、低くて22% (輸送設備)である。製造物の平均的な拘束税率は、48.8%で、工業製品は34.2% である。
 それゆえに、税率の協調をめざしたフォーミュラは、インドのような国に影響を与え、合衆国のような協調を推進した国に有利に働くであろう。合衆国では、平均の拘束税率と適用税率は、既にそれぞれ3.9%と4.3%にまで低下している。
 そのフォーミュラの言葉とは異なり、開発途上国にとっての柔軟性 は、等しく強調され、重要であるとは見なされていない。開発途上国は、柔軟性がフォーミュラの議論とは切り離された、独立した規定として扱われるべきであることを求めた。しかしその文書は、実際にはこうした要求を無視している。
 その文書は、開発途上国の柔軟性に関して、まだ何の詳細も示さず、この柔軟性の大切さを繰り返し主張することしかしない。それは途上国が特別かつ異なる待遇と、完全な互恵主義を満たさない関税削減の約束に触れるときでも同じである。
 農業では、完全なモダリティは、今年の4月30日までに、草案のスケジュールは2006年7月31日までになされる。

GATS圧力釜
 サービスでは、議論になりそうな付属書Cが、現在ではGATS(サービス貿易に関する一般協定)交渉の一部と認識している。付属書Cは、GATS交渉の目的、アプローチ、スケジュールを概説している。それは質的な目標と指標の追求と複数国間のリクエスト&オファー過程を通して、高い水準のサービス自由化を命じている。
 これらのいわゆる補完的アプローチは、リクエスト&オファー過程に固有な柔軟性を回避する方法であり、開発途上国に圧力をかけてより深い自由化を約束させ、より多くの部門を開放させる道具であるのは、明らかである。
 付属書Cは、以下のスケジュールを示している。複数国間リクエストは、2006年2月28日まで、オファー修正後の第二ラウンドは、2006年7月31日、約束の最終草案のスケジュールは、2006年10月31日である。

フィリピンにとって何を意味するか

 それでは、これらすべての取り決めは、フィリピンにとってどのような意味があるのか。「現存する『ポリシー・スペース』を維持し、輸出のための『攻勢をかけるスペース』を創出し、増大させる」。私たちの主要な農業交渉者であるセグフレッド・セラナ次官は、これがWTOにおけるフィリピンの交渉枠組みであると述べている。ポリシー・スペースという言葉で、政府はフィリピンの適用関税率(輸入に際して徴収された実際の税金)と、拘束関税率(WTOで約束された私たちの関税の上限)との間の相違に言及している〔訳注-ポリシー・スペースとは、ある国家が自国の政策(関税率など)を自国で決定できる裁量の幅のこと〕。
フィリピンの農業関税は、すでにかなり低い。拘束関税率は、平均すると34.35%で、このうち約90%は、0~40%にまで下落している。フィリピンの適用関税率はさらに低く、平均でたったの10%である(このうち87%は0-30%の範囲にまで下落している)。
 したがって、ポリシー・スペースの論理にしたがえば、フィリピンの農業生産品には、適用関税率と拘束関税率との間に平均で20-25% の許容量がある。合衆国の提案によれば、0-40%に下落しているタリフラインは、10年の間に36-50%の削減に従わなくてはならないだろう。これは、私たちの平均拘束関税率が17-22%に下落する(あるいはポリシー・スペースの35-50%が侵食される)ことを意味する。
 この理由のため、フィリピンはG33を通じてSPとSSMという議題を積極的に推し進めてきた 。かなり多くの生産品に特別品目のカテゴリーを保証することによって、フィリピンはWTOに命じられる関税削減の破滅的な効果からこれらの製品を守りたいと考えている。開発途上国にはタリフラインの数を自分で指定する権利が認められたものの、実際のパーセンテージは、いまだ交渉中である。
 フィリピンはSPとして指定された農産物のタリフラインである10-20%の範囲内でやっている。そしてフィリピンは、ポリシー・スペースを保護する道具としてSPとSSMの規定を頼りにしている。しかし私たちは、SPの規定がたえず骨抜きにされるのを交渉のなかで見てきた。関税削減なしをめざしてG33で推進された超強力な立場から、SP、さらには数量制限の再制度化に至るまで、SP内の関税削減パーセントをフォーミュラの関税削減未満にすることが、現在承認されているように思われる。すなわち、SPは関税削減からの完全な遮断や免除を可能にするものではもはやない。
 NAMAとサービスでなされた譲歩も、ポリシー・スペースを明らかに浸食している。たとえばNAMAで、現在のところフィリピンは、以前はWTOの領域外であった自国製品の39%に義務を負わされるだろう。これはいまだ義務を負っていない水産物のタリフラインの95%を含むであろう。
非農産品に関する私たちの平均的な拘束関税率は26%で、私たちの適用税率は9.5%である。現在検討中の提案は、開発途上国に15-30%の間に削減係数を定めるよう求めている。
 通産省の算出が示すところでは、削減係数を30%にした場合、非農産物の拘束関税率は、私たちの適用税率に近いか、少し高い程度になるであろう。関税委員会の議長であるエドガード・アボンによれば、「30%ならば、私たちは自国製品の5%を除く、ポリシー・スペースの大部分を維持できる。しかし30%よりも低い係数は、適用税率にまで食い込んでしまうであろう」。
 私たちが義務を負っていない製品では、現在唯一の頼みに思われるのは、除外の要求である。不幸にも、NAMAの付属文書Bの8章に含まれている除外は、留保されたままである。今までに留保の数は、公式の削減に満たないタリフラインの10%とタリフラインの5%である。

香港での防衛的な立場?

 その会議の前のスピーチで、貿易長官のピーター・ファビラは、多くの重要な領域でのフィリピンの立場をあらためて表明した。農業では、かれが平等を担保するのに重要な装置であると述べるところの、特別で異なる待遇とSPの重要性が強調された。NAMAでは、 ファビラは 8章の柔軟性の大切さを繰り返し主張し、これが独立した規定であることを認めた。しかしながら、フィリピンは少なくとも二つの係数に関して、スイス・フォーミュラの適用を認めている。サービスでは、ファビラはフィリピンがいわゆる補完的アプローチに反対していると強調した。そのアプローチは、自由化をさらに推し進め、外国株や投資の規制のようなセンシティブな政策領域に影響を与え、その国のオファーに当初含まれるよりも多くの部門や領域を自由化する。ファビラによれば、「これらの新しいアプローチは、2001年3月に私たちの職員が合意した、リクエスト&オファー交渉のモダリティにはっきりと対立している」。
 ピーター・ファビラ長官は、先進国に向けた次の嘆願をもって、その会議の前に自らのスピーチを終えた。「自らの規模だけでも、あなたたちは成長し続けることができるでしょう。しかしあなたたちは、世界のより弱い経済を強化し、力づけることが自らの義務であることを忘れてはならない。私たちはみな、同じ人間としてこの世界に生まれたのです」。
 フィリピンの防衛的な姿勢で言葉にされていないのは、私たちの現在の関税構造がどこかおかしいことの承認である。私たちのきわめて低い適用税率、過去の全般的な自由化プログラムの結果は、私たちの選択肢をかなり狭める。それゆえに、私たちの関税構造の再編は、フィリピンの交渉枠組みにおいてもっとも重要な要素であるべきだ。
ファビラのスピーチは、これらの交渉におけるフィリピンのような国の防衛的な立場を反映していた。その一方でこのスピーチは、フィリピンが公正な貿易の調停者としてWTOに信頼を置き続けており、複数国間の貿易システムに頼れば発展の期待がかなうと考えていることの確認でもあった。
 私たちは、香港会議とドーハ交渉の最中での防衛的に見える態度にもかかわらず、自由化が今もフィリピンの発展のモットーであり、それが貿易と投資に関する二国間、あるいは地域間の自由な交渉内部で追求され続けることも考えなくてはならない。

ラウンドをストップさせる

 香港で「暫定的な取り決め」が強引になされたことは、ドーハ・ラウンド交渉の幕引きを2006年までに設定するうえで、効果的である。
 したがって貿易の活動家たちにとって、2006年は決定的な年である。WTOは4月の終わりまでに農業とNAMAに関する新しいモダリティを、7月までに約束のスケジュール案を、2月終わりまでにサービスに関する複数国間リクエストを作ることをめざしている。交渉は現在、よりペースを速めてジェノバに戻った。
 ストップ・ザ・ニューラウンド・コアリションのような、WTOとドーハ・ラウンドへの異議申し立てキャンペーンをしているグループが現在挑戦しているのは、新しいモダリティをめぐる合意を阻止し、2006年までにラウンドの幕を閉じるのを妨げる努力へのステップ・アップである。
 WTOの新しい貿易協定を阻止する努力とともに、私たちは、より速いペースで私たちの経済を開放しようとする地域間、二国間の貿易と投資の協定に反対するキャンペーンも強化しなくてはならない。
 私たちの前にある挑戦は、実際には手ごわいものである。しかし抵抗は続いているし、集合的で、よくコーディネートされた行動を通して、来るべき月日には力を増してなくてはならない。私たちが 昨年の12月に香港で目撃した、民衆運動の間に芽生えたたたかいとつながりによって、そのキャンペーンを力づけ、真の発展のための議題へと突き進もうではないか。
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