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WTO香港会議―――何が売り渡されたのか 

taiwanwto.jpg洪家寧(工人民主協会/台湾)

今回もこれまでと同じように、欧米日などの開発国が全面的な勝利に終わったことは間違いない。表向き、欧米代表は今回の取り決めに「満足はしていないが、受け入れることはできる」と語っているが、実際には猿芝居もはなはだしいといわざるを得ないだろう。
かつてアメリカの「新大陸」やアフリカを「発見」した植民地主義者が、何の値打ちも無い物を使って先住民の土地や財産を騙したり脅したりして強奪したのと同様である。今回の会議では、欧米は農業において「譲歩」したかにみえるが、譲歩は全体におけるほんのわずかな部分であり、たった一歩の後退で工業やサービス業においては大股で何歩も前進をしたのである。

台湾政府は、今回の交渉結果は台湾にとって「きわめて有利であった」とのべた。なぜなら工業やサービス業の開放は台湾からの輸出にとって有利になるからであり、農産品関税の引き下げの影響も限定的なものに留まるからだという。

また台湾政府は、今回の交渉で新規加盟国(台湾や中国)の「特別待遇」をかちとったと嬉しそうに語った。新規加盟国は加盟の際に大幅な開放を実行したことから、それに続く交渉ではより一層の弾力的空間を有することになるからだという。

だが、本当にそうなのだろうか。


■ 開発国と多国籍企業が全面的に勝利した香港閣僚会議

今回の会議で交渉の重点とされた農業、サービス業、非農産品市場アクセスに関する交渉からみても、先進開発国とその資本家が勝者であるといえるだろう。

*農業交渉

農業では、最終的に密室交渉において、EUの提起した案を採用した。当初、途上国側が提起していた2010年までに農産品輸出補助金を廃止するという期限は、2013年までに延長された。それは、富める国があと8年間も安い農産物を世界各地にダンピング輸出できるということである。それだけではない。欧米の農産物が実際のコスト価格の半分以下の値段である最大の理由は、輸出補助金にではなく、さまざまな国内補助金にあるのだが、今回の交渉ではこれらの補助金を削減するいかなるタイムスケジュールも提起されなかった。

ではなぜ台湾政府は今回の交渉結果が台湾農業に対して「影響は大きくない」と言うのだろうか。政府の説明では、台湾がWTOに加盟する際、輸出補助金は実施しないと約束しており、2013年の輸出補助金廃止の期限が台湾に与える影響は大きくなく、逆に農産品輸出には有利になる、ということである。だがそれは、台湾農民は、そもそも補助金の恩恵を受けてはおらず、WTO加盟の際に交渉の材料としてだけ扱われたあげく、8年後にやっと世界の農民と「公平な競争」ができる、ということを意味しているにすぎない。だが台湾農民はあと8年もじっと待つことができるのだろうか。

*サービス貿易

サービス貿易に関しても、欧米が最大の勝者である。香港閣僚宣言のサービス貿易に関する文書では、欧米が積極的に推していた「付属文書C」が採用されたが、その大原則はよりいっそうのサービス貿易の「自由化」である。

GATS協定が定めるサービス貿易には、越境取引、国外消費、商業拠点、人の移動の四種類の貿易形態(モード)がある。基本的に付属文書Cは、「自由化」を阻害するあらゆる保護や障壁の廃止や削減を要求している。

たとえばモード3(商業拠点、すなわちある外資系サービス業が台湾で開店するといった場合)の修正方向は、資本の自由な移動にとって極めて有利なものになっている。付属文書Cは各国に対して、外資の投資比率制限の一層の緩和、経済需要テスト(Economic Needs Test, ENT※)の廃止や削減の実施、法人形態に一層の弾力性をもたせるなどを要求している。

※ 経済需要テスト:外資系サービス業あるいはサービスを提供する自然人の市場参入を制限する一種の貿易障壁。テストポイント、地域の限定、数量の限定、持ち株比率の限定などがあるが、台湾ではこれらの制限はなく非常に「自由」である。

当初ほとんど進展していなかったモード4(自然人の移動、すなわち移住労働者の導入)は、今回大いに躍進したといえるだろう。そこには、さらに多くの業種で請負サービス業を開放すること、さらに多くの専門的分野(弁護士や会計士など)を開放して自国市場に受け入れること、さらに多くの業種の多国籍企業の内部調整とビジネス訪問に対して開放すること、経済需要テストの規制の廃止や削減などが含まれる。台湾はモード4については中高レベルの開放度の国家であり、それは今後第三世界の安い労働力が請負や派遣などの形態を通じて台湾に導入されるということであり、使用者による雇用の「弾力性」が増大し、失業、賃下げ、雇用のフレキシビリティの傾向に一層の拍車をかけるということである。

また今回は、サービス貿易の交渉方法についての「改善」が行われた。それまでの「リクエスト・オファー」方式(※)の二国間交渉以外に、複数国交渉方式の採用も可能になった。それは、今後いくつかの国が連合して、ある国のサービス市場の開放を迫ることができるようになるということである。例えばEUとアメリカが連携して、台湾に対して何らか事業の開放を要求するというように。

※ 相手国に開放してもらいたい分野を提示して、相手国がそれを受け入れた時点から具体的な交渉を行うという交渉方法。二国間交渉によって妥結した結果はWTOのすべての加盟国に対して適用しなければならない。たとえばA国がB国に対して保険事業の開放をリクエスト(要請)し、それに対してB国がオファー(受入れ)して、その交渉の結果、B国の保険事業を開放することについて合意した場合、A国だけでなく他のWTO加盟国も同じ条件で開放されたB国の保険事業に参入することができるというもの。

*非農産品アクセス

NAMA(非農産品市場アクセス)については、工業製品の関税引き下げについて妥結がおこなわれた。引き下げ幅がかなり激しく、欧米が主張してきた「スイス方式」を採用することに決まった。この方式による関税引き下げでは、高関税であるほど引き下げ幅も大きい。工業発展が比較的遅く、高関税によって国内産業を保護してきた途上国は大幅な関税引き下げに直面することになる。また、欧米諸国の工業製品が世界を席巻する大いなる推進力になる。それはまた、工業製品においても農産物とよく似た問題に直面することでもある。欧米の安い工業製品が途上国にも巨大な衝撃をもたらすことになるからだ。労働者、とりわけ内需産業(家電、紡績、自動車など)の労働者は大規模な失業に直面することになるだろう。

台湾政府は労働者におよぼす衝撃については絶対に語ろうとはしないだろう。「わが国の輸出ビジネスチャンス、とくに自動車とスポーツ産業にとって有利である」としか語らないだろう。台湾の資本家にとって有利であるということは、台湾の労働者にとって有利であるとイコールではない、ということをわれわれは肝に銘じなくてはならないだろう。今回の交渉結果は、たしかに台湾の一部の競争力のある輸出産業にとっては有利であり、この産業の労働者にもいくばかの恩恵がもたらされるだろ。しかしそれはあくまで短期的なものである。なぜなら労働のフレキシビリティ、資本の自由な移動はすべての労働者に強い影響を与えずにはおかないからだ。

*新規加盟国への優遇

新規加盟国に対する弾力的な待遇については、台湾政府は嬉々として次のように語っている。台湾がWTOに加盟する際に、農業とサービスなどについてはすでに大幅に開放を約束したことから、今後は比較的緩やかに台湾の市場開放を進めることができる、と。しかし結局どのような優遇措置があるのかについては、宣言の中では何ら語られてはいないのである。原則的にそのように述べられているだけであり、結局は今後の交渉次第ということである。半殺しの目にあいながら、すこしだけ息継ぎの時間を与えられた状態でしかなく、しかも結局はさらに痛い目にあうということにも関わらず、どうしてそれを喜べるというのだろうか。

■ 大敗北をまぬかれたから勝利?

ドーハラウンドは「開発ラウンド」とも呼ばれている。4年前、カタールの首都ドーハで行われた第四回閣僚会議からこの交渉ラウンドは始まった。そして、このラウンドを途上国にとっても有利なものにするという呼びかけから、ドーハラウンドを「ドーハ開発ラウンド」と称して、貧困国の「発展」にも有利になるような貿易ルールを提起する必要に迫られた。今回の閣僚宣言のなかで、後発開発途上国(LDCと呼ばれ一人当たりのGDPが750ドルに達しない国々を指す)に対して優遇措置をとることが付け加えられた。それは、2008年までに、開発国と開発途上国がLDC諸国の少なくとも97%の産品に対して、課税を行わず、数量制限も設けずに受入れるという「無税無枠」措置を行うというものである。これについて、それまで後発途上国はグローバリゼーションの一方的被害者であったが、今回はサービス業と被農産品市場アクセスにおいては敗北したが、「無税無枠」措置で幾らかの利益をかちえることができたので、「大敗北をまぬかれたことは勝利だ」と評価する意見がある。

しかし「無税無枠」による恩恵はほんの取るに足らないものだ。50カ国のLDC諸国が全世界の貿易に占める割合は1%にも満たないごくごく限られた規模であるからだ。またこれらLDC諸国において輸出向けの工場をもっている大部分は他でもない多国籍企業自身なのである。結局、多国籍業が「自分自身」に対する優遇措置を手に入れたに過ぎないのだ。

■ 途上国が団結して欧米帝国主義に対抗した?

今回の勝者は開発国だけにとどまらない。交渉を「円満に達成」することができた最大の要素は、いくつかの途上国の巨頭の裏切りにあった。

インド、中国、ブラジルなどの「強大な」途上国が、「率先して」欧米諸国の開発国に対抗することができる、という一部の反グローバリゼーション運動にあった幻想は完全に打ち砕かれた。

香港会議に先立ち、中国の胡錦涛国家主席は、各国に対して積極的にドーハラウンドを推進し、香港において「実質的な成果」をかちとるよう呼びかけた。会議の開幕では、中国代表団の団長である商務部(通産省)の薄熙来大臣がスピーチの中で「責任ある国家として、中国は今回の交渉におてい努力し、貢献するでしょう」と語った。そして、薄大臣は会議期開催間中に行われた7回の密室交渉会議すべてに参加した。閣僚会議閉会後、彼は「香港会議では積極的な進展をかちとった。われわれはこの結果に満足している」と評価した。

そのとおりだ。香港政府は、散弾銃、催涙弾、放水車、ペッパースプレー、警棒、拳と安全靴の暴力で会場外の抗議行動参加者を弾圧し、900人以上の逮捕をだすことで、中国のいう「責任ある国家」的任務を正確に遂行したのだから。また史上前例のないWTO抗議行動への参加者14名に対する起訴によって、グローバル資本主義の使命を達成することに成功した(※)。

※ シアトルやカンクンでも香港に劣らず警察の弾圧はすさまじかったが、抗議行動参加者を起訴することはなかった。

開発途上国の別の二大巨頭であるブラジルとインドの代表も、香港閣僚会議の結果を「歓迎する」と語った。ブラジルの外務大臣は、「これで(WTO交渉の)威信を維持することができた。G20のコーディネーターとして、わたしは今回の案を歓迎する」と語り、インドの通商大臣は「われわれはこの案を歓迎する。これは途上国が直面するさまざまな問題の解決の道を切り開くものである」と語った。

今回、中国、インド、ブラジルは途上国の利益を完全に裏切っただけではない。グリーンルームにおける密室交渉において欧米とぐるになり、自国の労働者農民階級の利益をも裏切ったのだ。WTO交渉は開発国と途上国との戦争などではなく、労働者、環境、女性など抑圧されたものたちと資本家との戦争なのである。

■ 楽しみは最後にとっておくもの――これからのスケジュール

香港閣僚宣言では具体的な削減数値や開放項目を提起されず、交渉スケジュールと目標、原則などを決めるにとどまった。中国の薄熙来大臣は「今回の会議は回答の書き出しにすぎない。・・・・・・今後二、三ヶ月が非常に重要である。われわれは引き続き中国と自由貿易のために一層の成果をかちとる所存である」と語っっている。今後の交渉が非常に重要になるだろう。具体的な事項については、2006年末までに交渉を終え、ドーハラウンド交渉は終了することになっている。この期間こそ、わたしたちが政府に対して一切の交渉の細目を公開するよう要求し、宣伝と動員を展開しなければならない時である。

*今後の交渉スケジュール

2月28日 サービス貿易 複数国リクエスト(要望)提出

4月30日 農業と非農産品市場アクセス モダリティ(関税削減などに関する具体的数値の入った各国共通ルール)の作成

7月31日 農業、非農産品市場アクセスはモダリティにもとづいた譲許表(スケジュール)の作成、サービスは第二次改定オファーの提出

10月31日 サービス貿易 最終約束表案の提出
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コメント

ありがと&質問

翻訳、ごくろうさま。わかりやすかったです。

で、質問ですが
質問1、(工人民主協会/台湾)
これは意味としては労働者民主協会っていう感じでしょうか?で、どういうグループ? 政党?市民グループ?労働者サークル?

質問2、先進開発国
これって、中国では一般的な名称なんでしょうか?
日本語では先進国に開発って言う言葉をつけることはあんまりないですよね。英語を直訳して漢字にすると既開発国っていう感じなんでしょうけど。

以上、ちょっとつまんない質問でごめん。

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