FC2ブログ

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

バリ会議特集(その6):「オフセット」は本当に炭素を相殺するのか? 

carbon offset 2008年もバリ会議特集は続きます。気候変動の議論では、いま「オフセット」という言葉がさかんに飛び交っています。日本語で「相殺」を意味するこの言葉は、ある国が別な国の炭素排出の権利を購入する、炭素貿易(カーボン・トレード)の論理を支えてます。一見すると何の問題もなさそうに見えるこの「オフセット」ですが、これに強く異議を唱えている環境運動の活動家たちがいます。以下はこの活動家たちのインタビューの翻訳です。

************

まちがった解決策とたたかう―ケビン・スミスとジュタ・キルへのインタビュー
Celsias(2008年1月9日)

合衆国では、温室効果ガスを減らすために炭素排出の上限設定や貿易システムにかなりの焦点が当てられている。そんな中、私は「炭素中立的という神話」の著者であるカーボン・トレード・ウォッチ(Carbon Trade Watch)のケビン・スミスとシンクスウォッチ(Sinkswatch)のジュタ・キルと話して、なぜかれらが世界中を回って、炭素貿易とオフセットの失敗について聴衆たちに話をしているのかを知った。

************
レズリー・バーリアント(以下、LB):私は、あなたがスピーキング・ツアーに出かけ、炭素貿易(カーボン・トレード)と森林オフセットの問題点を話したと聞いています。誰がその聞き手だったのでしょうか?

ケビン・スミス(以下、KS):私たちの話の聞き手は、多岐に渡っています。とりわけ現在では、合衆国における気候変動に関する公的な議論、政策対応はどうすべきか、アメリカは気候危機に何をすべきかといったことに関与したいと考えている人たちが聞き手になります。何が起きていて、どんな対応をすべきなのかについては、たくさんの議論がなされているように思われます。私たちは、EUの炭素貿易枠組みを監視し、それがいかにして排出削減に失敗しているのかを見てきました。私たちは、南のコミュニティにおけるオフセット・プロジェクトの影響に関する多くのフィールド調査をおこない、企業から得られるまことしやかな情報ではなく、それらのプロジェクトで何が進んでいるのかについて批判的に検討をおこないました。米国気候アクションパートナーシップ(the US Climate Action Partnership)のようなロビー団体から、いかに炭素貿易がすばらしいかについて、たくさんのことを聞いているかもしれません。しかし、私たちは、違ったことを話しています。

LB:炭素貿易という考えは、最初どのようにして生まれたのですか?

KS:炭素貿易の起源として広く取り上げられているのは、合衆国大気浄化法(the U.S. Clean Air Act)における大気硫黄の取引枠組みです。それはとてもうまく機能したと言われているので、炭素貿易のモデルになったのです。実際のところ、その大気浄化法は、2010年までに大気硫黄を35%減少させるという予測がありますが、ドイツでは、政府が大気硫黄を規制して、何の取引枠組みがなくても、同じ期間に大気硫黄の90%を減少させたのです。そう、大気浄化法は、ある程度まで機能し、企業が関わることによって安上がりですんだのは確かです。しかし、コスト効果に焦点を当てたことで、低収入地域の周辺に「有害ホットスポット」を生み出してしまいました。市場を基盤にしたメカニズムよりもいっそう効果的な政策手段があります。当初、京都議定書の下では、炭素貿易についての議論は何もありませんでした。焦点は、一国内での排出削減に向けられていました。その後、合衆国が炭素貿易を提案し、合衆国を取り込むために炭素貿易を含めるという瀬戸際外交ゲームをおこないました。皮肉なことに、どっちみち合衆国は、議定書から離脱しました。グリンピースの気候変動シニア・キャンペイナーは、その取引を成立させるために悪魔と取引をおこなってしまい、結局のところ、悪魔と取引するだけで、何の取り決めもなされなかったと語っています。

LB:炭素貿易の問題点とは何でしょうか?

KS:異なる多くの問題点があります。大きな問題の一つは、次の点です。私たちがEUの枠組みから得た証拠のすべてが、汚染者が支払いをするのではなく、利益を得ていることを示しています。ちょうど先週のイギリスの新聞報道は、2008年に始まったEU貿易枠組みの第二ラウンドの結果、エネルギー部門が60億ポンドの利益を上げると言っています。巨大エネルギー企業は、多数の認可を得たことで、 数10億ポンドの利益を稼ぎました。実は、あなたがたは、最大の汚染者たちに報酬を与え、かれらに利益を得ながら何の炭素排出に関する改善をせずにいられる機会を提供しているのです。もう一つの問題は、次の点です。炭素貿易のシステムは、地球の炭素循環能力の私営化を意味しています。人びとがこれを望んでいるかについて、ほとんど何の議論もありません。それは既成事実として起きています。そのシステムは、炭素循環の権利を割り当てるシステムです。誰がその権利を得るべきか、その人たちがその権利を扱うべきかに関して、民主的なプロセスは存在しません。

 炭素貿易のシステムは、複雑になっています。自生的な炭素市場と規制された炭素市場の両方が存在します。しかしながら、両方とも、南の市場における新しい植民地主義を表しています。炭素植民地主義では、南の諸国の排出削減を低コストに見積もって、それを新しい商品として扱います。そしてその商品は、北の消費者と企業の利益になるように、うまく利用されるわけです。南の国で何が起きているかについては、ジュタがもっと多くを話すことができますが、私たちは、これらのプロジェクトがしばしば地域のコミュニティに有害な影響を及ぼしていることも目の当たりにしています。この事実は、無視されているので、人びとはプロジェクトを続けています。私たちがこれらのコミュニティについて、現場で何が起きているのかを耳にすることはほとんどありません。私たちは肯定的な側面だけを聞いているに過ぎないのです。私たちの経験では、現場の人びとは、これらのプロジェクトでとてもつらい経験をしています。

LB:森林オフセットの何が問題なのでしょうか?

ジュタ・キル(以下、JK):植林オフセットに関しては、全てに問題があります。それは他の炭素オフセットと同じ問題の多くを共有しています。一例ですが、私たちは、排出を抑制しているかどうかを証明できないのです。しかし、最大の問題は、森林中の炭素が、化石燃料の中と同じように、安全に蓄えられるわけではないということです。森林は燃え、倒れ、虫に食べられます。これらのこと全ては、木の中に蓄えられた炭素を解き放ちます。森林を植えれば、化石燃料から解き放たれた炭素を吸収してくれるだろうというのは、幻想です。なぜなら、私たちは、炭素に何が起きるかをコントロールできないからです。次の段階では、どれだけの多くの炭素が森林中に蓄えられるのかという問題があります。何を数えるのか、根元の炭素か、土中の炭素か、木の周辺かによって、測定は50%以上も異なります。私たちは、ある貯蔵部分を逃しているかもしれないし、別な部分を多く数え過ぎているかもしれないのです。

LB:炭素オフセットについてはどうですか、それは良い考えなのでしょうか。たとえば、旅行のように、何かを搬送するということなのでしょうか。

JK:私は正確な数値を調べなくてはなりません。しかし、ある優れた比較が示すところでは、 この努力は大変無駄なものだそうです。毎年の観光関連の旅行から出る排出を相殺するには、だいたいベルギーの大きさの面積を植林し、数世紀とまでいかなくても、数十年間、その森林を保存し続ける必要があります。したがって、もしこれに挑戦するならば、排出を証明することが不可能であるのに加えて、この木をどこに植えるかという問題が出てきます。もし私たちが植林で排出を相殺しようとするならば、その木を植える別な星を探す必要があるでしょう。

KS:ケンブリッジ大学の植物学者で、景観史家でもあるオリバー・ラックハムは、(気候変動を解決するために)植林をするというのは、上昇した海水位を下げるためにもっとたくさんの水を飲むようなものであると言っています。個々人のオフセット(相殺)によって、企業は人びとの気候変動に対して何かをしたいという願望を商品化しています。企業は人びとの衝動を何か現実的なものにまで引っ張っていき、それをマウスのクリック(もう一つの消費主義的行動)に還元してしまいます。実際のところ、これは、コミュニティを基盤にした政治的組織化から人びとの目をそらすことに役立っています。そうした組織化は、気候変動に対して必要な変化を作り出すために、起こさなくてはならないものであるのにもかかわらずです。オフセットは、すべての焦点を個人の消費とライフスタイルに置きます。電球を替えて、効率的な車を運転することよりも、洗練された分析が必要です。電球と他のライフスタイルの要素は、重要な役割を果たしてはいます。しかし、それらはオフセット企業があなたにそう信じさせているようには、ことのすべてなわけではありません。

JK:それは大切なポイントです。炭素オフセットは、 気候変動の責任を個人化させるのです。それは同時に、組織的な変革の必要性と、政府が異なる選択肢を私たちに示す必要性を脇に追いやります。炭素オフセットは、「私は、自分の義務を支払う限り、他の選択肢を必要としません」と言っているのです。それは、私たちに必要な公的圧力を築いて、政治家が異なるエネルギーシステムに移るのに必要な思慮のある変化を生み出すことを遅らせるでしょう。炭素オフセットは、私たちのエネルギー使用と生産方法を大きく変化させるための公的圧力も遅らせます。

KS: 合衆国では、炭素オフセットは、投資のあり方を左右し、それに影響を及ぼすために使われてきました。たとえば、現在、テキサスで石炭発電所が計画されています。発電所会社が将来に排出を相殺すると言ったので、地元の活動家グループは、反対を撤回しました。しかし、その会社のために、私たちは数十年も石炭発電所の下にいるわけです。

LB: 人びとと企業は、炭素を減らそうとしています。それでは、もし排出制限と貿易、またはオフセットシステムでなければ、それを削減し、その影響を最小化する解決策は、何があるのでしょうか。

JK:別な方法は、一つや二つではなく、数多くあります。ある人は、個人、企業、政府レベルでエネルギーを減らすことを考えています。より重要なのは、各国政府が化石燃料への補助をやめて、クリーンで公正なエネルギーを支援する必要があることです。たとえば、クリーンな石炭に関しては、数多くの議論がなされています。山頂の立ち退き地域の住民が、クリーンな石炭などはないと言うまで、その議論は止まらないでしょう。私たちは、クリーンなエネルギーへの変化を押し進め、異なるエネルギーを得る方法を理解する必要があります。そうした動きは、ローカルな組織化をおこなうことと、政治家に話をすることから始まるでしょう。たとえば、地域の人びとがエネルギー、輸送、食料の観点から自立をすることを話し合っている住民運動があります。私たちは、こうした行動をおこなう必要があります。机に座って、勘定書を作ることでは、私たちに必要な変化をもたらすことができないでしょう。的確な技術のプログラムに大規模な公的投資をおこなうことも必要です。これまでは炭素の価格に多くの注目を向け、人びとにとって手頃な代替エネルギーを作ることにはさして焦点を当ててきませんでした。大規模な科学技術プロジェクトを考えれば、それには常に大規模な公的投資が生じます。問題は、大石油会社とエネルギー企業だけがもうけるのではなく、コミュニティに利益をもたらすようなやり方で、それをおこなうことです。炭素貿易が、そのような水準の変化を起こし、必要な進展目標を達成させることはないのです。

KS:オフセットと炭素貿易がこれほど強調されるようになった理由の一つは、このような方法で排出削減をしたという実績によるのではありません。というのは、そうした実績の証明がないからです。むしろ、それらが極めて市場志向で、年々の成長に執着する現在の経済システムと両立するからでしょう。私たちは、気候変動に対処するには、成長に執着するし、それに合わせて化石燃料を消費するというあり方を問題にする必要があります。現在の経済システムから抜け出す方向へと動かなくてはならないのです。

LB:より多くの風や太陽を使用できるようにするために、エネルギーに最小限の支払いをかけることについて、あなたはどのような意見をもっていますか。

JK: 再生可能なエネルギーに奨励金を提供することは、役に立つでしょう。ドイツでは、エネルギー事業所は、すべての有効な再生可能なエネルギーを買い上げなくてはなりません。しかしその事業所は、消費者に値段を転嫁しています。その法律が定めているところでは、事業所は決められた額で再生可能なエネルギーからすべてのエネルギーを買い上げなくてはならず、それゆえに再生可能なエネルギー供給者に安定を提供します。このことは、設定価格に関して長期的な安定を提供することで、多くの再生可能な開発が、大企業ではなく小規模企業の利益になっていることを意味しています。農民は、光電池を農場において、再生可能なエネルギーの増加を助けています。同時に、これは技術がより手ごろになって、小規模企業が関われることを意味します。グリーンエネルギーに支払いをする個々のエネルギー使用者は、もしそれが化石エネルギーの生産減少を保証する一連の政策になれば、OKを出すでしょう。そうでなければ、電気がより高くなり、さらにエネルギーシステムに何の変化も生じないからです
さらに、ドイツは汚染の最もひどい石炭発電所をいまだに建設していますが、再生可能なエネルギー支援の政策は、どうすれば、そんなことをしないですむかについてのモデルとなるでしょう。石炭工場の建設に関して言えば、それは賢明な法律を掘り崩してしまいます。発電所の多くは、次の10~15年で再生されなくてはなりません。したがって、私たちの政治家は、次の半世紀を想定して、私たちのエネルギーインフラがなんであるかを決めるでしょう。というのは、一度石炭工場を建設したら、それを運営することになるからです。それゆえに、巨大な投資が汚い石炭になされる前に、今こそ構造変化を起こさなくてはなりません。

LB:もしあるとすれば、地球温暖化に取り組むにあたって、企業はどのような役割を担えばよいのでしょうか。

JK:それは、どのような企業か、それらの企業がエネルギーとの関係を根本的に変える必要性を理解しているかどうかによります。私は、温暖化への取り組みの実績が何もないけれども環境にやさしいことを主張する石油、石炭会社には、何の果たす役割もないと思っています。企業の役割は、化石燃料を廃止すること、廃止に抵抗するのをやめることです。たとえば、ドイツでは、自動車会社は、より効率的な車を建設する必要がなくてすむようにたたかっています。その会社の役割は、問題を解決するために科学技術と工学技術を発展させることです。そして、科学技術の使用は、時間軸と教育と連動させておこなう必要があります。

KS:企業の力と影響力の大きさが、問題の大きな部分を占めています。京都議定書がそのように骨抜きになったのは、企業のロビー活動がそれを現在のように効力の弱いものにしたからです。政治過程と環境条約に対する企業の影響力の性質は、何とかしなくてはならないものです。私たちが貿易に関して目の当たりにしているのは、そもそも最も排出の原因となっている機関に対して、何らかの行動を回避し、お金をもうける機会を私たちが提供しているということです。

原文はこちら
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。