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有害廃棄物輸出で「美しい国」づくり? 

ゴミ川
脱WTO/FTA草の根キャンペーン主催の連続学習会が、13日、総評会館で開かれました。最終回の今回は、化学物質問題市民研究会の安間武さんによる「日本の廃棄物輸出政策の分析―3Rイニシアティブ、非関税障壁の回避、経済連携協定」という報告でした。発表の概要は、以下のとおりです。



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【日本の廃棄物輸出】
日本の廃棄物輸出政策の三本柱は、「3Rイニシアティブ(「国際流通に対する障壁の低 減」の推進 (注:reduce/reuse/recycle)」、「非関税障壁の回避」、「EPAによる完全撤廃、規制緩和」です。非関税障壁(その代表が後述の「バーゼル条約」)を除去して、リサイクル貿易を推進することを、EPAを使って制度化するというのが基本方針です。しかし中古品輸出で先進国は廃棄物が減るが、途上国では廃棄物が増えているという訴えが出ています。たとえば「3Rイニシアティブ閣僚会合」(2005年4月)では、開発途上国から「開発途上国へ廃棄物が流入し、ゴミ捨て場になっている」という発言がされました。

なぜ先進国は、廃棄物を途上国に輸出しようとするのでしょうか。たとえば日本では、最終処分場が逼迫している、廃棄物処理コスト削減、国際循環による資源の有効利用といった言い分がまかり通っています。とりわけ最後の「国際循環」の言い分でよく出される例は、テレビのブラウン管のガラスです。「『地デジ時代』の日本では、もはやブラウン管のテレビが必要ないけれども、途上国ではまだまだ用途があるので、中古ガラスは、まだまだ資源として再利用できる」。このような論理のもとに、有害廃棄物の鉛を含んだブラウン管のガラスの輸出が、正当化されています。

1990年代以前の有害廃棄物輸出は、「直接的」でした。残骸油や焼却灰、農薬、医療廃棄物が、ドラム缶に入ってそのまま途上国へ輸出されていました。しかし現在は、中古品・再使用名目で廃棄物が輸出されるようになりました。廃棄物輸出に対する社会の目が厳しくなってきたのを受けて、その方法がより巧妙で「間接的」になっていったのです。たとえばナイジェリアに輸出された中古パソコンの場合、再利用されるのは、わずか25%に過ぎません。残りの75%は単なる廃棄物なのです。

廃棄物輸出に対する日本の検査体制は、きわめてずさんです。オーストラリアの場合、使用済み電子機器の輸出入は、豪州有害廃棄物法で検査が義務付けられています。しかし日本では中古の輸出前検査要求は存在しません。また国内の中古品には規定されている「拡大生産者責任」の仕組みは、海外に輸出する場合には適用されません。

このような日本政府が現在熱心に推進しているのは、3Rイニシアティブです。そこではさらなる廃棄物の輸出が計画されています。政府の委託を受けたシンクタンク、「地球環境戦略研究機関(IGES)」は、「国際リサイクル特区」を指定し、そこでリサイクル資源の国際取引を認めるよう提案しています。さらには、3Rイニシアティブの実施を妨げるとして、廃棄物の国境を越える移動には厳格な手続きを要求するバーゼル条約を攻撃しています。

バーゼル条約(1989年採択)では、有害廃棄物の国境を越える移動を規制しています。廃棄物の発生の最小化を定め、その排出者責任と国内処理原則を明記しています。しかしこれには、大きな抜け穴があります。第一に、輸入国の同意があれば輸出できることです。第二に、世界169カ国が加入しているのに、廃棄物大国であるアメリカが批准していません。そこでバーゼル条約修正禁止条項(1995年採択)が、EUやアフリカ諸国を中心に提案されました。この条項では先進国による非OECD諸国への有害廃棄物の輸出を例外なしに禁止しています。日、米、韓、加、豪、NZの六カ国は、このバーゼル条約禁止条項に反対しています。そのためにいまだに批准に至っていません。

【途上国の船舶解体問題】
廃棄物輸出の典型例として、船舶解体を挙げることができます。先進工業国で使用された船舶は、中国とインド亜大陸(バングラディッシュ、インド、パキスタンなど)の海岸で解体されています。そこでは現地住民が、低賃金でアスベストやPCB類などの有害物質を取り扱っています。船舶解体の代わりに、労働者の健康と命、さらには海岸地帯の水や土壌の汚染が犠牲になっています。そしてこの船舶解体の問題には、日本人も深く関わっています。バングラディッシュのチッタゴンで解体される船舶の7割は、日本船だからです。

EUや国際的な環境団体等は、スクラップを目的として廃船を輸出するのはバーゼル条約違反である、と主張しています。しかし米、日、マルタ、ギリシャ、ノルウェーなどは、これに反対し、国際的な合意にはなっていません。現在でも汚染物質の事前除去がなされないままに、途上国に送り込まれる廃船が後を絶ちません。

【EPAと廃棄物輸出】
以上のように既成事実と化している廃棄物輸出は、EPAによって制度化されます。これを象徴的に示しているのは、「日本フィリピン経済提携協定(JPEPA)」をめぐる問題です(こちらを参照のこと)。いまフィリピンのNGOは、「放射性廃棄物」が輸出されるのではないか、という懸念を抱いています。JPEPA関税撤廃リストには「放射性物質および使用済み原子炉用(放射性)燃料要素(カートリッジ)」が含まれているからです。これも日本用関税リストでは、明示されておらず、日本人には気づかれないようになっています。

JPEPAやJTEPA(日タイ経済提携協定)を通して、国内・国外のNGOとのネットワークが形成されようとしています。06年11月、12月、07年2月の三度にわたり、EPAを使った廃棄物輸出に抗議する市民団体共同声明を出しました(共同声明は、こちらをチェック)。


有害廃棄物輸出問題によって、直接私たちの生活が被害を受けるわけではありません。しかし日本政府が、廃棄物を途上国に輸出して、「美しい国」を標榜しているのはいかがなものでしょうか。「環境正義(environmental justice)」の思想から、国境を越える環境問題に抗議していかなくてはならないと考えます。

【質疑応答】
①廃棄物輸出の観点から、EPAがアジアに張りめぐらされようとしている現状をどう捉えればよいのでしょうか。
→すでに廃棄物輸出は起きています。EPAはそれに制度的な保証を与えるのがねらいです。現在では昔のように廃棄物をそのまま途上国に捨てることができなくなっています。そこで合法的に廃棄物輸出できる仕組みを作ろうとしています。政府は「廃棄物の有効利用」などという建前を掲げていますが、本音は違うところにあるといえるでしょう。

②日本には廃棄物輸出の水際検査のシステムはないのですか。
→経産省や環境省は、一応チェックしています。しかし廃棄物輸出の実態をつかんでいるとはいえません。というのは廃棄物という名目で輸出する人はほとんどいないからです。再利用目的と申請すれば、輸出前検査を免れることができます。しかし再利用される部品は、輸出品の一部分にすぎません。たとえ25%しか再利用せず、残りの75%を捨てるとしても、それを織り込んで、現地の業者も購入をしているのです。

③EPAと国内法が衝突した場合、どうなるのですか。
→競合する法がある場合、基本的には後に制定され、より具体的な法律が優先するという国際法学者の意見がありま す。またJPEPA4条には、この協定の運用に関連したり、影響を及ぼしたりする国内法を見直すように規定されています。それゆえにフィリピンやタイの人びとは、EPAによって国内法が変えられ、廃棄物輸出が可能になるのではないかという懸念を表明しているのです。

④EPAによる廃棄物輸出に関して、外務省はどう話しているのですか。
→外務省の説明によれば、WTOでは90%以上の品目をリストに入れなくてはならないので、数合わせのために入れたが、廃棄物輸出の意図はないそうです。しかしこれは詭弁に過ぎません。いますぐに輸出するわけではないかもしれません。たが将来、輸出できるような仕組みをつくっているのが問題なのです。

⑤中国の有害廃棄物の現状は、どうなっているのですか。
→中国はかっては環境被害国でしたが、同時に加害国に変わろうとしています。2002年、中古家電の輸入を禁止しましたが、香港経由でどんどん入ってきます。他方で中国やインドでは、IT公害(廃パソコン)が、ものすごい規模で拡大しています。しかし途上国にはこれで儲けている人もいます。途上国のエリートは、アメリカ政府と似たようなことを言うものです。

⑥政府は「廃棄物」ではなく「循環資源」という言葉を使いますが、これをどう見ればよいですか。
→「循環資源」はまやかしにすぎません。「廃棄物を輸出する」とは、言えないので、「循環資源」という言葉を使っています。結局、廃棄物輸出をなくしていくには、「生産→消費・使用→廃棄→処理→生産…」 というサイクルの「消費・使用」のところを減少させなくてはならないのですが、これは企業の利益を減少させるので、政府は強く主張できません。また、廃棄→処理は 発生国内で行うという「国内処理原則」を厳格に実施する必要があります。
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